イベントは、新たなリードを獲得し、顧客開拓に結びつけるための有力なマーケティング手法です。
「イベントマーケティングに取り組みたいが具体的なやり方がわからない」
「自社にとって最適な手法とは何か」
「イベントを開催しても集客できるか不安」
このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、下記について解説します。
- イベントマーケティングの特性とメリット
- イベントの種類と特徴
- 企画設計の流れと準備段階のコツ
一口にイベントといってもさまざまな手段があるため、それぞれの特性を押さえて、自社の目的やターゲットにあわせた設計を行うことが大切です。効果的な活用方法を押さえていきましょう。
イベントマーケティングとは
イベントマーケティングとは、企業や団体がイベントを企画し、そこで自社製品やサービスをアピールする手法です。自社で企画・主催をするプライベートイベントや、他社も一堂に会する展示会への出展などが挙げられます。
2010年代までは大半がリアル型イベントでしたが、コロナ禍をきっかけにオンライン型のイベントに注目が集まり、手法も急速に発展しました。
しかし、リアルな空間だからこそ熱気が伝わりやすく、人々の関心や興味を惹きつける魅力があるため、現在も多くのリアル型イベントが開催されています。
イベントマーケティングの魅力とメリット
多くの企業がイベントマーケティングを積極的に実施するのは、次に示すようなさまざまなメリットがあるためです。
顧客および見込み顧客との接点を作れる
イベントは、新規の見込み顧客や既存顧客とのコミュニケーションを取る絶好の場です。
接触回数が増えれば増えるほど相手は好感を抱きやすくなるため、ユーザーとの間に信頼関係を築くのに役立ちます。リアルな場では、近い距離感で会話できるため特に効果が見込めるでしょう。
既存顧客のなかには、何か理由がないとアポイントが取りづらいというケースもあるかもしれません。しかし、イベントへ招待するのはちょうどよい機会になるので、接点を生み出す絶好のチャンスといえます。
ブランディングと認知度の向上
イベントはブランドの知名度を高め、企業の存在感を増すきっかけになります。
新しい製品の発表や拡販にあわせて、イベントを開催するのは王道の手法といえるでしょう。イベントとあわせて、プレスリリースやSNSでのキャンペーンなどを行うと、さらなる拡散効果が期待できます。
イベントの場所や形式、告知方法によって、認知効果は大きく変わってくるので、入念に計画する必要があります。
競合との差別化を図れる
イベントを行うことで、自社製品にスポットを当てた大々的なPRが可能です。顧客や消費者に対して製品の魅力や特長を訴求することができます。
同様の製品を取り扱う競合他社がいる場合には、イベントの実施や展示会への出展を先行して行うことにより、顧客に認知されやすくなります。その結果、製品が選ばれやすくなることは大きなメリットです。
製品へのフィードバックが受けられる
イベントは顧客から直接フィードバックを得られる場でもあります。顧客と直接会話する機会も設けられるほか、アンケートを実施すればまとまった数の顧客の声を簡単に集められます。
顧客の声は、製品やサービスの改善に役立つうえに、新たな課題やニーズを発見するきっかけともなるため非常に重要です。どのように生の声を集めるかは、イベントの設計をする段階で考えておきましょう。
イベントマーケティングのデメリット
イベントマーケティングには、次のようなデメリットもあります。対策もあわせて紹介します。
結果が不確実である
イベントは基本的に一回の本番勝負です。成功するか、期待した効果が本当に得られるかは実際にやってみるまで誰にもわかりません。特に初開催のイベントは、とりわけ効果を予測しづらいでしょう。投じた費用やマンパワーに見合わない結果しか出ないというリスクがあります。
まずは予算や準備の負担を最低限に抑える形式で実施して、効果があれば次回に予算や規模を拡大するといったステップを踏むとよいでしょう。
ディスブランディングの可能性
イベントを実施したのに集客できなかったときや、情報が意図しない形で外部に伝わった場合など、自社や製品のイメージを損なう恐れがあります。
このようなブランドイメージの悪化につながるような事態が起こる原因として、事前の計画の甘さや準備不足が考えられます。
集客施策はもれなく実施し、イベントの中身に関しても担当者だけではなく複数部署で検討することで、リスク回避の可能性を高められるでしょう。
効果測定が難しい
イベントで出会った人が一定の期間が経ってから成約につながったとします。このとき、どこまでがイベントの効果といえるか、検証が難しいことは否めません。見込み顧客が成約するまで多くの要素が複雑に絡むため、即座に効果を測定するのは困難です。
イベントからの成約率は継続的にチェックするほか、集客数や商談数の変化など複数項目で比較すると測定結果の確度を高められるでしょう。
イベントの種類と特徴
イベントマーケティングにもさまざまな手法があります。イベントの種類により、特徴やメリットが異なるため、自社の目的に沿った選択をしましょう。
イベントの種類 | 展示会 | カンファレンス | セミナー | ユーザー交流会 | ミートアップ | 体験型イベント |
---|---|---|---|---|---|---|
規模 | 大規模 | 大規模 | 小~中 | 小~中 | やや小 | やや小 |
費用 | やや高い | 高い | やや安い | やや安い | 安い | やや高い |
集客数 | 多い | 多い | 少ない | 少ない | 少ない | 少ない |
ビジネス化 | 易しい | 難 | やや難 | やや難 | やや易しい | 易しい |
展示会
BtoBでイベントマーケティングといえば展示会が定番です。
ユーザーに製品やサービスを体感してもらいながら説明できること、その場でリアルなコミュニケーションが取れることは、展示会特有の魅力です。多くの来場者が集まる展示会では、リードの数が注目されますが、コミュニケーションを通じてリードの質を判別することも可能です。
ただし、イベントによって集客の差があること、慣れていないと出展の準備に時間がかかることが注意点としてあげられます。それでも、会場の用意からはじまりすべての段取りを自社で行う場合に比べると準備の負担は格段に少ないため、費用対効果は高いでしょう。
カンファレンス
カンファレンスは大規模な会議型のイベントです。自社が単独で企画するセミナーに比べ、業界全体のキーパーソンが集まる場は権威性も高まります。
主催者から登壇を依頼されれば費用をかけずにプレゼンできますが、依頼されたテーマに沿って講演を行うため、自社や製品のPRを中心に行うことは難しいでしょう。
自社のビジネスより公益性が重視される傾向にあるため、自社のビジネス化まで時間がかかるかもしれません。
セミナー
オフライン型セミナーよりもオンラインで行うウェビナーは手軽に開催できるため、ここ数年で急速に浸透しました。スマホが1台あれば、どこからでも参加できる利便性は、受講のハードルを下げることにもつながります。実施する側にとっても、リードを獲得するのに効果的な手段です。同じ内容をブラッシュアップしながら繰り返し実施できるうえ、まとめてファン化を促進できるのはメリットといえるでしょう。ただし、聴講者の聴講時間が短くなったり、他の業務をしながら聴いたりするケースも多いため、内容に集中してもらうための工夫も必要です。
また、今やセミナーイベントは飽和状態なので、集客のためには話題性あるテーマや演者のセッティングが必要です。
ユーザー交流会
既存のユーザー同士の情報交換を促す機会を作り、顧客満足度やロイヤリティを高める目的で開催されます。SaaSのようにサブスクリプションビジネスで解約を防ぎたいときなどには特に有効で、クロスセルやアップセルにも使われます。
既存ユーザーにも熱量やサービスの利用頻度に差があるため、どのレベルのユーザーにあわせて実施するかなど企画設計には工夫が必要です。
ミートアップ・勉強会
ミートアップ、つまり出会いを創出するための機会で、セミナーなどよりもカジュアルな内容、形式で開催されることが多いイベントです。
意見交換、情報交換などを少人数で行い、自社への親近感を高めるのがねらいです。参加ハードルが低く、コミュニケーションも取りやすいため、企業の採用目的で行われることもあります。
カジュアルで開催しやすい反面、提供する内容がミスマッチだと逆効果になる恐れがあるのは注意点です。
体験型イベント
試食会、試乗会、内覧会、実演会など、その場所でリアルに体験することで顧客の購買意欲を刺激できます。
セミナーで事前に興味のある層を絞り込み、興味のある顧客を呼び込むなど、ほかのイベントとの組み合わせると成果が高まりやすいです。そのため、先にカスタマージャーニーを設計してイベントへの導線を作っておくのが理想的です。
体験型イベントだけを単体で行うのは、多数の参加者に対応することが難しくなるので効率が悪くなる恐れがあります。
イベントマーケティングの企画の流れと効果を高めるコツ
イベントの種類は違っても、企画の流れや効果をより高めるポイントは共通しています。以下でステップごとにコツをご紹介します。
1. 企画の段階で目的を明確化させる
どのようなターゲット層に、どんな体験を届けたいのか、イベントを行う目的とゴールを設計します。途中で目的がずれないように、初期段階でもKPIを設定しておくことが大事です。
KPIの主な項目としては商談件数、リード件数、商談金額などがあります。リード件数や商談件数については、純粋な新規獲得数ではなく、さらに細かくランク分けをした有効数(=温度感が高いリードや商談)をKPIとして設定すると、より成果につながりやすくなります。
どの数値を最も重視するかは、あらかじめ社内で合意を取っておきましょう。
2. イベントの概要を決めて予算を確保する
目的に基づいて実施するイベントを決めます。広く認知度を高めたいなら展示会やカンファレンス、既存顧客のフォローを重視するなら交流会や体験イベントが候補にあがるでしょう。
さらに、自社で主催するか、外部のイベントに参加するのかで、かかる予算や業務の内容、負担も大きく変わってきます。単発で企画するのではなく年間または半期単位で計画した方が、予算配分や人員配置を最適化できるでしょう。
3. 告知や集客を徹底して行う
イベントは集客なくして成功しません。イベントそのものの準備にパワーを取られて集客がおろそかにならないように、集客計画や役割分担を事前に決めておくのが重要です。
また、展示会やカンファレンスなどで主催者が集客を担うイベントでも、自社による集客活動は欠かせません。事前の集客活動をもれなく実施した企業と何もしていない企業とでは、ブースや自社セミナーへの集客数には大きな差が生まれます。
4. ほしい成果から逆算してオペレーションを行う
大規模なイベントには、当日のマンパワーも必要です。どのタイミングで、参加者にどのように声をかけるのか、あらかじめ意識統一しておきましょう。
どんな個人情報を集めるか、アンケート項目で知りたいことは何かなど、その先のマーケティング活動にもかかわる内容は特に重要です。当日のマンパワーで対応できる範囲で、優先的に集めたい情報を整理しておきましょう。
5. アフターフォローを行う
イベントの開催前にアフターフォローも構築しておきましょう。
「鉄は熱いうちに打て」が鉄則なので、得られたリードの配分方法やアプローチ方法などを事前に決めておきます。イベント後は、いかにスムーズに営業部隊と連携しながら、商談化やフォローに集中できるかが重要です。
3カ月後、半年後などと期間を区切って、イベント自体の効果測定も欠かさず行いましょう。
まとめ
イベントマーケティングには、新規顧客開拓のほか、ファン化の促進、ブランディングなどさまざまな効果があります。
マーケティング担当者は、リード獲得にとどまらず、いかに売上アップを実現するのか、といった設計が求められます。自社の目的に応じて、適切なイベント形式やプロモーション手法を考えましょう。
RX Japan 株式会社 第三事業本部 早田 匡希
2005年にリード エグジビジョン ジャパン株式会社(現在のRX Japan)に入社。エレクトロニクス技術の展示会「ネプコン ジャパン」、フラットパネル開発・製造の展示会「ファインテック ジャパン」を担当し、営業活動/マーケティング活動に従事。2007年には営業責任者、マーケティング責任者に就任。その後、自動車向けの電子技術であるカーエレクトロニクスの専門展の新規立ち上げを担当し、2009年1月、「【国際】カーエレクトロニクス技術展」を初開催。2012年に事務局長に就任。2018年に医薬品・化粧品の開発・製造展である「インターフェックス Week」、飲料開発・製造展「ドリンク ジャパン」の事務局長に就任。2019年より第三事業本部長。
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