この記事でわかること
- 新規顧客を開拓するための手法
- プル型営業とプッシュ型営業の違い
- 自社に最適な手法を選ぶための考え方
企業が売上を伸ばし、成長を続けるには新規顧客の開拓は重要な活動です。しかし、既存顧客の対応など目の前の業務に追われていると、新規営業に十分なパワーを投入できないという組織も珍しくありません。
自社の扱う製品やサービスの存在を知ってもらい、購入まで結びつけるためにはさまざまな手法がありますが、投入できる予算やマンパワー、製品の特徴といった条件にあわせて最適な方法を選ぶ必要があります。
本記事では、新規顧客開拓の始め方を解説します。
新規顧客開拓が必要なステップ
新規顧客を開拓しなければ、企業としての成長を続けることは難しいでしょう。既存顧客が半永久的に取引を継続することはほぼあり得ません。また限られた数の顧客の購入額が増え続けることを期待するのも非現実的です。
売上を伸ばし、企業規模を拡大するには新規顧客の獲得は不可欠なのです。以下で、顧客開拓に必要なステップを紹介します。
1. ターゲットの選定
まず新規顧客を獲得できそうなターゲットを決めます。誰に対して営業をかけるか、作戦を立てます。
- 業種
- 業態
- 会社規模
- エリア
などでセグメントを分けて、新たに自社製品を買ってくれそうな企業がどこにいるのかをイメージしてください。
既存顧客を分析して「なぜ自社製品を選んでくれたか」を調べる、またはヒアリングするのもターゲットを定めるうえでの有効な手段といえます。
2.ターゲットリストの収集と作成
ターゲット層が定まったら、具体的な会社名や担当者名の入ったリストを作成します。
しかし、過去に接点のない企業の情報は容易には集められません。そこでさまざまなセールス・マーケティング手法によるデータの収集が重要となります。
- これまでのコンタクト情報をすべて集める
- 自社のWebサイトを訪問してもらう
- 電話をかけて担当者の氏名をヒアリングする
- 直接会って名刺交換する
などにより、営業をかけるべき相手の情報を整理できます。
このステップで、もれなくリスト化することにより、できるだけ自動化・効率化して、多くの情報を集めることが新規顧客開拓の成功のカギです。
3.リードナーチャリングをする
見込み客の個人情報を入手できても、すぐ商談に進めるケースは多くありません。早々に製品を売り込まれることを嫌がる方もいるでしょう。
ここで必要なのがナーチャリング、つまり顧客を「育てる」ステップです。
業界の動向や、多くの企業が抱える課題の解決方法を伝えることで、情報を受け取った側は提供側に対して好感を抱くようになります。
4.最適なタイミングで商談を設定する
ナーチャリングがうまくいくと、顧客は「自分の課題を解決したい」と強く願うようになります。この適切なタイミングで、商談をしかけることが受注・成約への近道です。
コミュニケーションを重ねるなかで、予算化の時期や決定権者などを把握しておくと、商談に持ち込みやすく、成約率も高まるはずです。
プル型とプッシュ型、それぞれのメリット
イベントマーケティングにもさまざまな手法があります。イベントの種類により、特徴やメリットが異なるため、自社の目的に沿った選択をしましょう。
プル型営業 | プッシュ型営業 | |
---|---|---|
特徴(定義) | 顧客側が情報収集している最中に出会う | 販売側が見込み顧客に対してコンタクトする |
メリット | ・課題が明確なので提案しやすい ・商談までいけば成約率が高い | ・すぐ営業を開始できる ・ターゲットを変えるなど、途中の変化にも対応しやすい |
デメリット | ・時間と手間がかかる ・売り込みたい企業が関心を持つとは限らない | ・成功率が低く効率が悪い ・悪いイメージを持たれる可能性もある |
代表的な手法 | ・セミナー開催 ・リスティング広告 | ・飛び込み営業 ・テレアポ |
営業手法には大きく分けてプル型とプッシュ型があります。ほぼ同じ意味でインバウンド営業、アウトバウンド営業などと呼ばれることもあります。
プル型とは、顧客が自ら情報収集しているときに接点を持ち、最終的に自社製品の販売へとつなげる考え方です。一方のプッシュ型は、テレアポや飛び込み営業のように顧客の関心にかかわらず、こちらからアプローチする手法です。
プル型営業には成約率が高いメリットがありますが、顧客から「問い合わせ」が来る状態を作るまでに仕掛けの工夫が必要で時間もかかります。プッシュ型は特別な準備がいらないものの成功率は低くなるほか、自社に対して悪いイメージを持たれるリスクもあるでしょう。
実際には二者択一ではなく、プル型とプッシュ型を組み合わせることで、マーケティングおよび営業の成果を最大化するアプローチが求められます。
プル型の新規顧客開拓方法
プル型に分類されるさまざまな新規顧客の開拓方法を紹介します。
展示会へのブース出展
業界関係者が多く集まる展示会にブースを出展して、自社の製品やサービスをアピールすると、多くの潜在顧客にアプローチできる可能性があります。
来場者は「何か新しい製品はないか」という目線でブースをまわるため、商談の機会は得やすいといえます。
名刺交換だけでなく、会場での接客、商談記録を管理することで、展示会終了後のフォローアップにつなげることが大切です。
ウェビナーを主催する
オンライン上でセミナーを開催し、設定したテーマに関心のあるユーザーを集めるイベントです。
準備にかかるコストも少なく、会場を用意する必要もありません。オンラインなら全国どこからでも参加しやすいので、集客しやすいという特徴があります。
またウェビナーを開催することで、その分野における専門性や権威性をアピールする効果もあります。
コンテンツマーケティングとSEO対策
自社のWebサイトに有益な情報が詰まったコンテンツを掲載し、検索エンジン経由での流入を増やす方法です。
自然に見込み客を引き付けられ、企業や製品に対する信頼性を高められます。また、コンテンツの力やSEO対策の内容によっては、長期にわたって自然流入が期待できます。定期的にコンテンツを更新し、新鮮度を保つことも効果を持続させるために有効です。
リードマグネット施策
ホワイトペーパーやテンプレート資料など「特典」をダウンロードできるようにし、見込み客の情報を収集する方法です。
見込み客の情報を磁石のように引き付けることから「リードマグネット」と呼ばれます。
ターゲット層のニーズに合った特典を用意することが不可欠で、製品のPRよりも客観性や公共性が求められる資料です。特典を欲しがるユーザーは、自社との親和性が高いといえるでしょう。
メディアへの露出
新聞やテレビ、雑誌などメディアに製品やサービスを紹介してもらう方法です。
信頼性の高いメディアから紹介されることで、ブランドイメージが向上し、大きな宣伝効果が期待できます。
PR担当者がプレスリリースを作成し、メディアに送付するほか、各媒体の記者との関係構築に努めることで、取材を受けやすくなるでしょう。
Web広告の出稿
GoogleやSNSなどに広告を出し、見込み客を自社サイトに誘導する方法です。上述したコンテンツマーケティングなどとの連動も重要です。
ターゲットとなる顧客層に絞って広告を配信できることや、効果測定が容易で、費用対効果の高い施策が可能です。
業界紙(誌)への出稿
特定の業界専門の新聞や雑誌に広告を掲載する方法です。
業界関係者や専門家などに狙い撃ちしてアプローチでき、業界内での認知度や信頼性が高まるでしょう。
近年はWeb広告に勢いがありますが、伝統的な産業や業界においては影響力の大きい専門紙誌も多くあります。
インフルエンサーマーケティング
SNSで影響力のあるインフルエンサーに製品やサービスを紹介してもらう方法です。
BtoCビジネスに適していると思われがちですが、特定の業種・業界にもインフルエンサーは存在するため、フォロワーに向けて効果的なアプローチができるでしょう。
プッシュ型の新規顧客開拓方法
次にプッシュ型の営業手法について特徴やメリットを中心に解説します。
飛び込み営業
飛び込み営業とは、客先にあらかじめアポイントを設定しないで、直接訪問する営業手法です。
相手が不在だったり、取り次いでもらえなかったりする可能性は高いものの、準備なしにその場で商談できるケースもあります。対面で顧客の課題やニーズを聞き、製品・サービスについて説明できる点が長所です。
テレアポ
テレアポは、電話で製品・サービスの概略を伝えて、後日のアポイントを取るための手法です。短時間で次々と見込み客にアプローチできること、相手からキーパーソンの氏名を聞き出せることなどが特徴です。
多数のコールスタッフを用意してもトークスクリプトがあれば一定以上の品質を担保できます。
ダイレクトメール
製品やサービスのチラシ、パンフレットなどを郵送して届けるダイレクトメールも、多くの企業で活用されています。
郵送料や印刷費用といったコストは比較的安価で、送付する件数によって予算をコントロールしやすいこともメリットです。
担当者の氏名がわからなくても内容物を相手先の社内に届けられるため、リストの準備も容易でしょう。
メール営業
見込み客にメールを送って、製品やサービスを案内し、アポイント設定を促します。
メール配信システムを利用して、一度に大量の件数を送付できることや、そこまでコストがかからない点は大きなメリットといえるでしょう。開封率や反応率などもわかるので、効果を測定しやすく、PDCAサイクルで結果の改善にもつなげられます。
フォーム営業
フォーム営業とは、Webサイトのお問い合わせフォームから営業する方法です。相手のメールアドレスがわからなくても、フォームからはメッセージを送れるため、こちらの意図した情報を届けられます。
「一度、内容だけでも聞いてみたい」と思わせる内容のメッセージを作ることが重要です。
ソーシャルセリング
ソーシャルセリングとは、SNSを活用して見込み客とつながり、営業する手法です。
SNSを通じたコミュニケーションにより、見込み客の関心事や悩みを把握しやすいのが特徴です。やりとりを重ねるごとに、信頼関係が強まっていくのは魅力だといえるでしょう。
ビジネスアプリ
ビジネス版のマッチングアプリを使っても、見込み客を発掘できるかもしれません。フィルタ機能を使って、効率的に見込み顧客を発見でき、アプリ内で簡単な案内まで済ませられるため手軽な手法です。
アプリに登録している時点でなんらかの情報を求めている方なので、通常のプッシュ営業よりは関心を示してもらいやすいでしょう。
交流会・ミーティング
オンライン、オフラインを問わず、イベントを開催して見込み客との接点を作り営業する方法も有効です。
Face-to-Faceで信頼関係を築くことができ、その場で商談に発展する可能性もあります。積極的に名刺を交換し、心理的な距離を縮めておくとその後も関係性が続きやすくなります。
自社に最適な手法を選ぶコツ
ここまでさまざまな手法を紹介しましたが、このなかで自社に適している手法を選ぶことが大切です。
以下で、手段を選ぶ際のコツをお伝えします。
ターゲット層から考える
売り込みたい顧客の属性や嗜好にあわせて、アプローチ手法を選択しましょう。BtoBとBtoCでは、効果的な手法が異なります。
情報収集に時間をかける、慎重な顧客層には、ウェビナーやコンテンツなどで情報を届けるプロセスが重要になるでしょう。
積極的な企業、情報のアップデートが早い業界には交流会やSNSなどでの情報交換が向いている場合があります。
製品・サービスの特性から考える
製品・サービスの価格帯や購入サイクルなどから逆算して、マーケティング手法を選択することも有効です。
一般的に高額商品は、「面談しなければ成約しない」などといわれるので、直接会う機会をどのように創出するかを考えるとよいでしょう。たとえば見込み客に向けた交流会、体験会や展示会などへの誘致も一手です。
低額商品はWeb施策を中心に展開するのが王道といわれます。単純な接触回数を高められるように複数のマーケティング手法に予算を振り分けることもあります。
他社動向や市場環境から考える
競合他社の動向や業界トレンドを踏まえ、差別化できる手法を選択するという考え方もあります。
新たな手法やテクノロジーの導入で、先行者利益を狙うなら、展示会のように他社が集まる場に打って出ることが存在感のアピールにつながります。メディアを活用した戦略も取りやすいでしょう。
成果を出すべき期間から選ぶ
短期的な成果が必要な場合は、即効性の高い手法の優先度を上げて考える必要があります。
展示会やテレアポ、飛び込み営業などが考えられます。中長期的な顧客開拓をめざす場合には、継続的な手法としてSEO対策やコンテンツマーケティングなどに取り組むことで継続的な効果が見込めるでしょう。
体制や予算から逆算する
候補に挙がったそれぞれのマーケティング手法にかかる費用やマンパワーを計算することも大切です。自社の予算規模や営業リソースなどに適していなければ、実施を決めたとしても、成果の出る形で実行するのは困難です。
逆にいえば、限られた予算で最大の成果をめざすためには、アウトソーシングやパートナー企業の活用を検討することも必要かもしれません。
展示会への出展がおすすめの企業とは
最後に、新規顧客開拓の手段として展示会の活用をおすすめしたい企業の特徴をまとめます。
次のような点が展示会の特徴です。
- 数日間(展示会開催期間)で即効性が高い
- 専属の営業パワーがいなくても実現できる
- どのようなターゲットに受け入れられるかテストマーケティングしたい
- オンラインでは再現できない製品の細かな商談が可能
- 予算に合わせた出展方法を選べる
以上に挙げたポイントに対して、1つでもメリットを感じるなら展示会への出展は、かかるパワーに対して得られる効果の大きい手段だといえます。
まとめ
各社間の顧客獲得競争は激しくなっています。国内だけでなく海外も含めて顧客を増やしたいという発想は、企業の成長にとって欠かせないものです。
紹介したように新規顧客開拓は、さまざまな手法の組み合わせによって成果が生まれやすくなります。自社に最適な手法を試行錯誤しながら、継続することが大切だといえます。
RX Japan 株式会社 第四事業本部 斎藤 広顕
2004年入社。花と宝石の展示会の国内営業担当として従事。2007年にガーデンEXPO(GARDEX)、2011年に農業WEEK、2017年に“日本の食品”輸出EXPOを発案し、立ち上げを担当。2022年にこれらの展示会の事務局長に着任し、発展に尽力中。また、DX Expertとして、社内横断の 「広告商品の強化プロジェクト」の責任者を兼任。
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