この記事でわかること
- コンベンションの概要と開催するメリット・デメリット
- 企画立案から開催までの流れ
- 失敗を防ぐために意識したいポイント
多くの場合、コンベンションとは世界各国から参加者を集める国際会議・学術会議のことをさします。一度に多くの人々が訪れて滞在するため、地域経済に与える影響も大きく、ひとつのビジネスとして行われるケースもあるほどです。
コンベンションは企画立案から開催後まで、どの工程にも対応すべきことが多数あります。また、多額の費用や人員も必要です。企画から運営を行うにあたって取り組むべき準備の全体像を把握しましょう。
コンベンションとは
一般的にコンベンションとは、国内外の識者を集めて行う会議をさします。ただし、内容や参加者の属性に明確な定義はなく、さまざまな催しがコンベンションとして扱われます。
コンベンションの企画段階から設計にかかわる場合は、趣旨やテーマを決める必要があります。
2カ国以上から参加者を集めて行う国際会議
コンベンションとは、多くの場合「2カ国以上の人々を集めて行う国際会議や学術会議」を意味します。アジア圏では、企業によるミーティング、研修旅行、展示会・見本市などと合わせて「MICE(マイス、Meeting・Incentive Travel ・Convention ・Exhibition/Event )」と総称されることもあります。
コンベンションの特長は、開催期間中に宿泊・飲食・交通の需要が一気に高まることです。開催都市にもたらされる経済効果の大きさから、地域振興策としての有効性は世界各国での成功事例が多く知られています。
日本政府観光局によると、2022年には国内で553件のコンベンションが開催され、総参加者数は約3万人でした(※1)。コロナ禍突入前は例年2,500~3,000件が開催されており、2019年の開催件数は3,600件以上、総参加者数も21万人以上に上っていました。
コンベンションの開催数・総参加者数は回復傾向にあり、今後も国内外のビジネスパーソンとの交流や消費を活性化させる目的でコンベンションの開催を検討する例は増えると考えられます。
国内で開催されるイベントをさす場合もある
コンベンションという言葉には、それほど明確な定義はありません。広義では、国内で開催される以下のようなイベントも含むケースがあります。
- 企業の会議
- 学会
- 展示会・見本市
また、海外の人を招かなくても「コンベンション」と呼ぶ場合もあります。
展示会との違いは開催の目的
コンベンションと同じく、国内外から参加者を募るイベントのひとつに、展示会があります。上述の通り、展示会もコンベンションのひとつとされる場合がありますが、大きく異なるのは開催の目的です。
コンベンションは「会議」の性質が強く、どちらかと言えば学術的な意見交換や交流の場としての面が大きくなります。一方、展示会は製品やサービスの発表・お披露目と、その商談の場として使われることが多いものです。
アカデミックな催しなのか、ビジネス目的なのかをイメージすると、両者の違いも把握しやすいでしょう。
コンベンションを主催するメリット・デメリット
コンベンションは一般企業でも主催や運営が可能で、成功すればいくつものメリットが享受できます。
ただし、自ら実施することには、リスクも伴います。これらの点も踏まえたうえで、主体となって実行するかを検討してください。
国内外における自社の認知度が向上する
企画内容にもよりますが、コンベンションには国内外の知識人・ビジネスパーソンが集まります。開催にかかわることで注目を集め、自社をアピールできる絶好の機会となります。
普段の業務ではかかわる機会が少ない人とも、自然に交流が持てるでしょう。その結果、自社にとっての新たなビジネスやイノベーションの創出にもつながるかもしれません。
成功すれば収益も見込める
会場で物品を販売したり、参加費や備品のレンタル料などを設けたりすることで、自社にも業務委託費のほかにも収益が見込めるでしょう。
コンベンションをはじめとしたMICEの参加者は、観光目的での旅行者と比べて滞在が長く、消費支出額も多いことが知られています。観光庁によると、2023年現在、コンベンションをはじめとしたMICE参加者と観光旅行者1人あたりの平均消費額は、それぞれ以下の通りです。
参加者の分類 | MICE参加者 | 観光目的での宿泊旅行者 |
---|---|---|
国内居住者 | 約9.2~11.8万円(※2) | 約6.3万円(※3) |
海外居住者 | 約44.3~64.3万円(※2) | 約21.3万円(※4) |
コンベンションの参加者は、観光目的の訪日客と比べて2~3倍程度の消費が見込めるでしょう。会場での物販を行うと、恩恵を受けられる可能性がありそうです。
※2 令和5年度 MICE総消費額等調査事業報告書|観光庁
※3 旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(速報)|観光庁
※4【訪日外国人消費動向調査】2023年暦年 調査結果(確報)の概要|観光庁
大掛かりな準備が必須で業務に支障が出やすい
コンベンションは一般的なイベントよりも規模が大きく、準備には多大な時間と手間がかかります。
広い会場と世界中への告知が必要なことから、3年程度前には開催が決まり、準備を進めることも珍しくありません。終了後も、レポートや報告書の作成に数か月~半年は必要です。
何より、それだけの労力をかけたとしても、必ずしも成功するとは限りません。事前にどれだけ入念な準備ができるかが、成功率を左右すると言っても良いでしょう。
開催資金の調達が難しい
コンベンション開催には、会場や誘致の規模にもよりますが、相当な資金が必要です。理想は、参加者の参加費のみで開催費用が賄えることです。
しかし、参加費や出展費用をあまりに高額に設定すると、かえって参加者が集まりにくくなる可能性もあります。特に、「国外で開催したコンベンションを国内でも開催する」というパターンの場合、参加費は過去の会議に倣わなければならないことも多いものです。場合によっては、後援や協賛、寄付金を集めることも検討しなければならないでしょう。
コンベンションの開催件数が増加している昨今、募金を含め資金調達がスムーズにできるとは限りません。必要な資金はなるべく自社で用意し、経費を削減してカバーする方が確実でしょう。
コンベンションを主催する際の手順
コンベンションを主催したい場合、大まかに以下のような手順で進行します。
- 開催目的を明確にして運営チームを作る
- 会議のテーマを決めて、リストアップした候補者に登壇の依頼をする
- 会場や用意すべきものを決め、必要な資金額を把握する
- 資金調達や会場の手配・設計、告知などを進める
- 参加者へのアフターフォローや報告書の作成
- コンベンションの効果測定をする
それぞれの手順で行うべきことを、簡単に解説します。
1.開催目的を明確にして運営チームを作る
まずは、なぜコンベンションを開催するのか、目的をきちんと定めます。コンベンションは「開催すること」が目的ではなく、何らかの目的を果たすためのものです。たとえば、以下のようなことが考えられるでしょう。
- 開催される分野の発展
- 新たな人脈の形成
- 地域経済の活性化
そのうえで、コンベンションの企画立案に移りましょう。目的と企画内容が定められれば、以下のような点も考えやすくなります。
- コンベンションの会場
- 開催日程
- 企画内容
- 運営チームに必要な人材
- 開催の告知や招待をする人・企業
2.会議のテーマを決めて、リストアップした候補者に登壇の依頼をする
次に、会議のテーマを決定し、候補者リストから登壇を依頼する人物を選びます。テーマはコンベンションの目的に直結するものを選び、それに合った講演者をリストアップします。そのなかから、コンベンションの趣旨を理解し、参加者に有益な情報を提供できる人物を選び、登壇を依頼します。登壇依頼は、候補者のスケジュールを考慮に入れ、早めに行うことが重要です。
3.会場や用意すべきものを決め、必要な資金額を把握する
続いて、調達すべき資金額を把握します。企画内容によっても異なりますが、コンベンションで必要な費用には、以下のようなものがあります。
- 会場費
- 会場までの交通費
- スタッフや登壇者の宿泊費
- 什器や機材・備品の購入またはレンタルの費用
- 告知用のチラシやWebサイト、ポスター、会場で配布する資料などの制作費
- 登壇者への謝金
- 会場で提供する飲食物の購入費
それぞれの費用の具体的な金額は、おおよその相場を調べたうえで設定しましょう。予算が余るとコストが無駄になり、逆に予算が不足すると、開催準備が思うように進まなくなる可能性があります。
4.資金調達や会場の手配・設計、告知などを進める
主催するコンベンションの詳細が定まったら、開催に向けて本格的に準備を始めます。資金調達を進めつつ、以下のような準備にも着手してください。
- 会場や宿泊先の予約
- 会場のレイアウト考案
- 会場の装飾物の発注や準備
- 必要な備品の準備
- 音響・照明など機材会社への発注
- 広報活動
- 会期中の人員計画の作成
真っ先に行うべきことは、会場の予約です。特に人気の会場の場合、1~2年以上も先まで予約が埋まっていることもあります。必要であれば、スタッフや登壇者の宿泊先の予約も同時に行っておきましょう。
5.参加者へのアフターフォローや報告書の作成
コンベンション終了後に、協力企業や参加者へ公開する報告書や関係者へのお礼状を迅速に送るアフターフォローは、コンベンションの準備段階である程度作成しておきましょう。終了後に作り始めると時間がかかり、スピーディーに公開や送付ができません。
6.コンベンションの効果測定をする
コンベンションは「やって終わり」ではありません。実際にかかったコストをもとに、当初掲げた目的は達成できたのか、費用対効果がどれほどだったか、などを算出してください。
なぜその結果に終わったのかなど、細かな分析が必要です。もし達成できなかった場合は、どこに課題や改善点があるのかを把握しやすくなるでしょう。
無事に当初の目的が達成できた場合も、成功の要因を可視化することで自社のビジネスとして確立しやすくなります。準備や企画立案、運営などあらゆる業務をマニュアル化し、今後も継続的に開催することを検討しても良いかもしれません。
コンベンションを成功に導く3つのポイント
コンベンションの成功率を高めるためには、次の3つを意識することが重要です。
- 余裕を持ったスケジュールで進行する
- 補助金・助成金を活用する
- プロへの依頼を検討する
ここまで対応できれば、主催のコンベンションで失敗するリスクを減らせるでしょう。
余裕を持ったスケジュールで進行する
「コンベンションを主催する際の手順」で記載した通り、コンベンションの企画立案から開催までにはさまざまな準備が必要です。
主催の経験が乏しい場合や人員が不十分な場合は、思うように準備を進められないことも考えられます。特に、海外から参加者を募る場合、告知や案内が遅れることで集客に苦戦する可能性もあるでしょう。
コンベンションは他のイベントと異なり、「開催日当日に、通りすがりの人を呼び込む」といった集客方法は難しいものです。無理のない開催スケジュールを検討しながら、早めの進行を心がけましょう。
補助金・助成金を活用する
国や地方自治体で、コンベンションの開催費用支援や誘致支援を行っている場合もあります。たとえば、日本政府観光局は各都市のコンベンションビューローと提携し、誘致・開催の支援を無料で行ったり、MICE運営の担当者を対象とした人材育成セミナーを実施したりしています。
各自治体でも、補助金や助成金が多数用意されています。一例として東京都は、都内で行う国際会議の誘致・運営にかかる以下のような費用を助成しています。
- 広告宣伝費
- 渡航費
- 印刷製本費
- 会場借上費
- 機材費
- 主催者が負担する海外講演者等の招聘経費
こうした支援は、全国の自治体で実施されています。自社だけでの資金調達が難しい場合、まず使える補助金・助成金がないかを探してみましょう。
プロへの依頼を検討する
事前の準備から運営までを自社だけで行うことに不安がある場合は、コンベンションの運営を専門に行っている企業を頼るのも選択肢の一つです。コンベンション運営のプロに依頼することで、以下のような効果に期待できます。
- 従業員が本来の業務に集中できる
- 質の高いコンベンションを開催できる
- ミスや失敗のリスクを減らせる
コストはかかりますが、無理や無駄・ミスがなくコンベンション運営ができると思えば、検討の余地はあるでしょう。まずは見積りを取り、おおよその依頼費用を把握するところから始めてはいかがでしょうか。
まとめ
コンベンションを主催することには、国内外における自社の認知度が向上する、大きな経済効果が見込めるなどさまざまな利点があります。
ただし、事前の準備から会期終了後まで、主催者には相当な労力もかかります。国や自治体のサポートを受けられることもあるため、検討してはいかがでしょうか。加えて、余裕を持ったスケジュールで進行することも重要です。
RX Japan 株式会社 第三事業本部 早田 匡希
2005年にリード エグジビジョン ジャパン株式会社(現在のRX Japan)に入社。エレクトロニクス技術の展示会「ネプコン ジャパン」、フラットパネル開発・製造の展示会「ファインテック ジャパン」を担当し、営業活動/マーケティング活動に従事。2007年には営業責任者、マーケティング責任者に就任。その後、自動車向けの電子技術であるカーエレクトロニクスの専門展の新規立ち上げを担当し、2009年1月、「【国際】カーエレクトロニクス技術展」を初開催。2012年に事務局長に就任。2018年に医薬品・化粧品の開発・製造展である「インターフェックス Week」、飲料開発・製造展「ドリンク ジャパン」の事務局長に就任。2019年より第三事業本部長。
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