この記事でわかること
- 成果が出にくい出展企業の陥りがちな誤解
- 展示会の事前の集客に関するノウハウ
- 出展成果につなげるためのブース運営ノウハウ
同じ展示会でも常に多くの来場者でにぎわうブースがある一方、期待していたほど集客できないブースがあるのも事実です。
要因としてブースの位置がよく指摘されますが、実はそれだけではありません。事前の集客活動や当日のブース運営の方法によってこそ、集客数に大きく差がつきます。
展示会出展を成功させるさまざまなノウハウのうち、自社のターゲットとなる顧客層と接点をいかに増やすかという点に着目して解説します。盛況なブースを創り出すためにお役立てください。
展示会出展を成功に導くノウハウとは
展示会出展は、ブースを出すのがゴールではありません。費用をかけて出展するからには、出展担当者は成果を出す必要があります。
まず出展を成功に導くための心構えを紹介します。
事前・本番・会期後にわけてノウハウを整理する
事前や本番などのフェーズによって、タスクや活かせるノウハウはさまざまです。まずは、フェーズごとに必要なタスクとノウハウを整理しましょう。
<フェーズごとのタスクの例>
事前
- どの展示会を選ぶべきか
- 目標設定はどうするか
- 集客活動はどのように行うか
本番
- ブース接客はどのように行うか
- 人員体制はどうするか
- 温度感の高い見込み顧客を営業にどうつなぐか
会期後
- フォローをどう行うか
- 出展成果をどう評価するか
事前の集客ノウハウと本番での接客ノウハウ、会期後のフォローに、スポットを当て解説します。
展示会の成功の秘訣は準備が8割
展示会の成功は、本番の数日間にかかっていると思われがちですが、実は準備段階でほぼ決まるといわれています。
出展自体が目的になり、成果を出すための取り組みが不足しているケースは少なくありません。ブースの準備に時間が取られ、集客活動がおろそかになってしまうのです。
しかし事前の告知、案内などが網羅的にできていれば、出展の成果は格段に変わるでしょう。
集客や接客に関するよくある誤解
出展してもうまくいかなかった企業に話を聞くと、ある誤解が多いことがわかりました。どのような企業でも陥りがちな内容なので、ぜひチェックしてみてください。
誤解1:出展成果はブースの大きさでのみ決まる
大きなブースの方が、一度により多くの接客ができるので、出展成果が高まりやすいのは事実です。ただし、小さなブースでも展示会のコンセプトが出展製品とマッチしていて、来場者がきちんと来ている会場なら、やり方次第で成功確率を高められます。
「面積が足りなかったから」「思い描いていた小間位置ではなかったから」は、本質ではありません。来場対象者と自社のターゲットにズレがないか、ブースへ集客するための活動が漏れなく実施できているか必ず振り返りましょう。
誤解2:集客は主催者が行うので出展社によって差はつかない
展示会そのものに集客を行い、多くの来場者を誘致することは主催者の使命です。ただし、展示会場へ誘致してくるまでが主催者の役割であり、会場に入った来場者については出展各社による「集客の競争」となります。
事前に出展のお知らせをして、招待状のメール送付などを行っていた企業へのブース来訪率はかなり高いことが知られています。逆にいえば待っているだけの企業は確実に不利となります。
各企業の集客活動の差が、そのまま出展成果の差につながるといっても過言ではないでしょう。
誤解3:展示会は新規顧客の獲得だけを目指すべきである
展示会では新規顧客の獲得を目的に出展するケースが多いですが、同じくらい既存顧客との接点づくりも図れる場です。
普段の営業活動では、既存顧客に対して、何か理由をつけないとアポイントが取りづらいケースもあるかもしれません。しかし、展示会への招待はちょうどよい口実になるので、接点を生み出す絶好の機会といえます。
既存顧客とのコミュニケーション回数を増やすと信頼関係が増し、クロスセルやアップセルを提案しやすくなります。また、既存顧客から新規顧客の紹介も受けられる可能性もあります。
誤解4:ブース内で声をかけると来場者に嫌がられる
出展スタッフが「声をかけると嫌がる人が多い」と誤解しているためか、来場者から声がかかるのを待っているだけのブースが散見されます。熱量の高い来場者には対応できても、潜在的に関心を抱いている来場者を取り逃してしまうので、非常にもったいない場面です。
もちろん、ただチラシを渡す、いきなり名刺交換やアンケート回答を促すなど、顧客目線でない接客が嫌がられるのは無理もありません。
来場者との接点をつくるには、こちらから「相手が何を欲しているか」を聞き、必要な情報を提供することが重要です。その一歩目として、積極的な声がけを行いましょう。
事前集客で行うべきノウハウ
出展の結果を左右する事前の集客活動でのノウハウを紹介します。
招待状の送付先をくまなくリストアップする
基本的に過去に接点のある社外の人には、漏れなくメールを送ります。
原則どの展示会でも、紙の招待状のほかにメールで送付できる案内も用意されているので、添付するかまたはダウンロードリンクを記載しましょう。
この「漏れなく」が重要なノウハウです。たとえ確度が低い見込み顧客であっても、展示会をきっかけに商談が生まれる可能性は大いにあります。現在の見込み確度や契約状態に関係なく、自社で保有するリスト全件に案内しましょう。
営業が名刺を手持ちで管理しているなど、社内で完全にデータベース化できていない場合は、これを機に顧客情報を整理してください。
営業社員が直接手渡しする
社外で顧客と接する機会がある際には、案内文や招待状を手渡しするのがおすすめです。口頭のみではなく手元に残る形で伝えるとブース来訪率が高まります。
訪問中の会話のタネにもなりますし、直接声をかけられて嫌な気になる人はいないので、漏れなく案内しましょう。
より重要な顧客には、ブース内での商談を促すために、会期中のアポイントも打診しましょう。ブース内で製品を一緒に見ながら伝える方が、提案に説得力を持たせやすくなります。
プレスリリースやSNSを活用する
自社の出展をさまざまな方法で対外的に告知します。告知手段としては、おもに下記があります。
- プレスリリース
- SNS
- ハウスリストメール
- 外部広告
- 協力会社からの告知
プレスリリースや自社のSNSなら、特別な費用はほぼかかりません。ハウスリストメールは実施必須ですが、あわせてこれらの施策も活用しましょう。
また、販売店や協力会社からの告知や有料の広告出稿なども自社のターゲット層にアプローチする効果的な手法です。予算やパワーを考慮し実施を検討しましょう。
ブースで開催するイベントやミニセミナーを企画する
自社ブースに集客するための「仕掛け」を用意します。
「新製品のお披露目」などと題したトークショーやミニセミナーは企画しやすく、集客効果も見込めるため、おすすめの施策です。実際に展示会の場で新製品を発表しているブースは多く見られます。
ミニセミナーなどを行うには、ブースの場所も重要です。大通り沿いのブースだと人が集まれるスペースが広くなるため、さらに多くの来場者の興味を引くことができます。
「3日間通じて11時と14時に2回開催する」など、開催スケジュールを事前に決めておくと集客のきっかけづくりがしやすくなります。
ブースでの接客に関するノウハウ
せっかくブースを訪問してくれた来場者にどう対応したらよいのか、成果につなげるための接客ノウハウを解説します。
声がけのルールを徹底する
第一声で何を伝えるか?を事前によくシミュレーションします。
声がけの例
- 新製品の特徴を伝える
- 「〇〇のような課題はありませんか」
- 「〇〇にご興味はありませんか」
こちらが伝えたいことを一方的に言うだけでは、来場者は圧を感じ警戒心を抱きます。来場者がブースに立ち寄りたくなるフレーズや、来場者のニーズを聞くような声がけを意識してください。
なかには積極的に声をかけたがらないスタッフがいることもあります。これは、相手が嫌がるからという誤解に基づくものです。まずこの誤解を解き、必ずこちらから声をかけることを徹底しましょう。
立ち話を続けず座って商談する
製品説明を軽く行うはずが、つい話が長くなることもあります。相手がある程度の興味を持っていたら、すぐに商談スペースへ案内しましょう。本腰を入れて商談できるので、顧客とのその後の関係性にも影響します。
説明スタッフが立ち話を続けているのを見つけたら、周りが声をかけて誘導するなどの連携も想定しておきましょう。
また、同時に複数の商談が発生しても困らないように、ブース内には商談席をあらかじめ2席以上用意しておくとよいでしょう。
名刺交換やアンケート回答を促す
その後の商談につなげるために、極力相手の情報が残るように努力します。
どんな情報を取得するのかは、優先順位も含めて事前によく検討する必要があります。
マーケティング部門と営業部門でほしい情報が異なるケースもよく見られます。関連部署には、取得項目を事前に確認し、合意を取っておきましょう。
会期後に行うノウハウ
会期後のフォローは、その後の商談化率に大きく影響するため非常に重要です。以下で会期後に行うノウハウを解説します。
速やかにお礼メールを送る
まずブース訪問者にお礼メールを送ります。文面や配信の準備はあらかじめ済ませておき、当日~翌営業日には送りましょう。
ブース訪問者と一口にいっても、パンフレットを渡しただけの人や、説明を熱心に聞いていた人など、さまざまなタイプの人がいます。展示会の対応時にそうした温度感や検討状況をメモしておき、顧客の状態に応じてメール文面を送りわけるとより効果的です。
お礼メールに関する詳細は、以下の記事で紹介しています。参考にしてください。
営業部隊がフォローしやすいように引き継ぐ
特に速やかなフォローが必要なものは、当日接客したスタッフから営業担当へ直接引き継ぐことをおすすめします。商談の内容をメモした対応シートやアンケート結果など文字だけの情報よりも、実際の温度感や担当者が気になった点をより詳細に伝えられるため、その後の対応の精度がより高まります。
フォローのタイミングは、接客後なるべく間を空けないようにしましょう。会期中に営業担当へ伝えて、すぐ連絡しても問題はありません。
即座にフォローが必要かどうか、スタッフによって判断基準が異なる場合があります。あらかじめ、来場者の反応やヒアリング回答などに応じてランクを設定し、判断基準をスタッフ内で統一しておくとよいでしょう。
セミナーなどの案内を継続する
すぐに商談化しない案件もフォローし続けると、機が熟して商談がスタートするかもしれません。そのためセミナーや記事コンテンツなど、トピックを継続的にメールで案内していきましょう。
自社製品への関心は低くても、よくある課題感や業界のホットワードに関連付けてコンテンツを作成すると興味をひきやすくなります。
案内を続けるうちに自社製品への関心が高まれば、見込み顧客の方から資料請求や問い合わせなどアクションを起こしてくれます。
なおフォローが途切れないように、セミナーや記事などのストックを十分に用意しておくのも重要です。スケジュールや対応人員は余裕を持って計画しましょう。
まとめ
展示会の事前集客やブース接客、会期後フォローに関するノウハウを紹介しました。
いずれも出展成果を高めるための王道といえる方法ですが、徹底して実施できていない企業が多いのも事実です。
ブースを出したその先に自社が目指すべき成果を改めて確認し、集客活動や会期以後の準備に取り組むようにしましょう。
RX Japan 株式会社 第二事業本部 小山 彩
2013年に中途入社。Exhibitor Successエキスパートとして国内外出展企業サポートに尽力。担当展は化粧品、観光、高機能素材に関する展示会などさまざま。2024年よりシニアエキスパートとして、すべての展示会で出展社により成果をあげていただくために日々ノウハウや事例をお伝えしている。
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