この記事でわかること
- 展示会出展で利用できる補助金の種類
- 補助金・助成金の探し方と受け取るまでの流れ
- 補助金や助成金以外に負担を減らす方法
展示会の出展費用の一部を補助する制度が、国や自治体などさまざまな団体によって用意されています。販路開拓や認知の拡大によって、企業の成長や産業の活性化を図ることがこうした補助制度の狙いです。
企業にとっては直接的な出展費用だけでなく、チラシの印刷費、展示会場までの費用といった間接的な経費負担が軽減されるのは大きなメリットといえます。ただし、あらゆる企業の出展が補助金の対象になるわけではありません。
今回は、展示会の補助金・助成金を受け取るまでの手順や注意点を解説します。
展示会の補助金・助成金を受け取る条件
補助金や助成金は、いずれも借入金のような返済の必要がありません。管理する省庁や審査により仕組みが異なります。
補助金は受けるための条件や資格を満たしていても必ず支給されるとは限りませんが、助成金は条件や資格を満たしていれば、ほぼ支給される特徴があります。
補助金は、新規事業や地域振興、公共性の高い事業といった経済の促進が主な目的です。こちらは経済産業省の担当です。一方、助成金は主に厚生労働省が管轄し、雇用や労働環境の改善を主な目的としています。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
管轄 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
財源 | 税金など | 雇用保険料など |
主な目的 | 新規事業の支援や地域振興、公益性の高い事業促進など | 雇用促進、能力開発、労働環境整備など |
支給の難易度 | やや難しい | 資格を満たせばほぼ通る |
得意とする専門家 | 中小企業診断士など | 行政書士、社会保険労務士など |
中小企業である
多くの補助金・助成金は、中小企業を対象としています。ただし、中小企業の定義は、業種・業態によって異なる場合があります。
たとえば製造業では、資本金が3億円以下または常勤の従業員数が300人以下という条件があります。一方、小売業では資本金は5千万円以下で従業員数の条件は50人以下です。このように自社の従業員数や資本金、売上などが当てはまるか、事前に確認してください。
補助対象の業種・テーマに関連している
特定の業種やテーマに関連した展示会のみが出展対象となる場合もあります。自治体のなかには地場産業を活性化する狙いから、地元企業が出展成果をあげやすいと想定される展示会をあらかじめ指定していることがあるのです。
そのため、自社が出展したい展示会が、補助の対象に選ばれるとは限りません。環境、IT、ヘルスケアなど、公共性が高く地元の自治体が注力している分野のみが優遇されるケースもあることも知っておく必要があります。
申請期限内に必要書類を添えて申請する
補助金・助成金の申請には、指定の様式や書類を使用する必要があり、事業計画書や経費明細書、見積書などの提出を細かく求められるケースが大半です。補助金・助成金は、公的なお金なので、対象となる経費が適正に使用されているか、報告書や明細書が細かくチェックされるのは、当然ともいえるでしょう。
そのため、初めて補助金を申請するには予想以上に苦労する企業も多いものです。行政書士や中小企業診断士など専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
細かな条件をクリアする必要がある
補助金・助成金の種類によってはかなり細かな条件が設定されていることもあります。
事業規模による制限のほか、過去数年の受給実績、連続出展の禁止、製品が地元で生産されているかなどの条件が設定されている場合、膨大な書類を準備して提出しても申請が認められない可能性があるので、事前確認を欠かさないようにしましょう。
展示会に使える主な補助金と助成金の一覧
展示会に活用できる補助金や助成金は、企業の販路拡大やブランド認知の向上を目的とし、国や自治体が用意しているものです。応募期間がそれぞれ異なり、年度によっては制度が新設または廃止される場合もあります。
最新の情報は J-Net21|独立行政法人中小企業基盤整備機構 で検索したうえで、募集元のホームページで詳細を確認してください。
(以下の情報は2024年5月9日時点のものです)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象にした補助金制度です。
小規模事業者の定義は、商業やサービス業では従業員数が5人以下、製造業などそのほかの業種では20人以下であることです。
経営計画を自社で策定し、商工会や商工会議所の支援を受けながら取り組む「販路開拓」を支援する補助金であり、展示会の出展費用のほか、チラシやパンフレットの制作、新商品の開発費用などが含まれます。また、販路開拓の目的に当てはまれば運搬費や通訳費なども適用となります。
補助上限は200万円ですが、インボイス制度に登録すると50万円が上乗せされます。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、新市場への進出や事業・業種の転換、事業再編など、事業の再構築に挑戦する中小企業などを支援する制度です。
展示会出展によって新たな市場の新規顧客を獲得するために、補助事業が実施される期間内に展示会が開催されることが必要です。
補助額全体は中小企業の場合、最大5,000万円で、最大1/2が補助対象となります。採択率は約45%前後が多いですが、前回の11次公募では約26%と下がりました。金額と補助率が大きく、さまざまな用途に使えることが特徴となっています。
展示会出展助成事業(東京都中小企業振興公社)
東京都中小企業振興公社では例年、BtoB型展示会への出展費用などを助成しています。
限度額は150万円で、2/3以内であることが条件です。開催時期によって10回に分けて募集されていますが、期間内でも予算額に達した時点で受付終了となります。
都道府県単位で、さまざまな制度があり大阪府「令和6年度大規模展示商談会活用事業(出展支援事業)」や神奈川県の公益財団法人神奈川産業振興センター「令和6年度 海外展示会出展・PR動画支援に関する助成金」などが代表例です。
自社の本社や支社のある都道府県および市町村、商工会議所などへ問い合わせると、独自の補助金に関する最新情報が得られるかもしれません。
ものづくり補助金
一般的にものづくり補助金と呼ばれますが、正式名は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。中小企業が自らの生産性を向上させるための革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善などにつながる設備投資を支援する補助金です。
さまざまなタイプがありますが「グローバル市場開拓枠」のうち、海外市場開拓を目的とした展示会出展が対象で、補助額は最大で3,000万円、補助対象となる経費の1/2が補助されます。
広告作成やブランディング・プロモーション経費などが該当します。
申請から受け取りまでの流れ
自社が対象となる補助金の探し方、申請方法、展示会の本番を経て、実際に費用が振り込まれるまでの流れを確認しておきましょう。
補助金・助成金を探す
まずは自社の規模や業種、出展予定の展示会に該当する補助金・助成金があるか、探す必要があります。
自治体や商工会議所など公式の情報を調べ、条件やスケジュールなどの詳細を確認してください。特に申請期限や提出書類は、あらかじめ把握しておきます。
申請書を作成して提出する
指定の様式や書類を入手し、必要事項を漏れなく記入します。一般的に事業計画書、経費明細書、見積書なども添付を求められることが多く、必要書類はかなりの枚数になるでしょう。
提出期限までに、すべての必要書類をそろえなくてはならないため、提携している行政書士や中小企業診断士などに作成を依頼するのもおすすめです。
展示会に出展する
出展目的や達成したい目標を明確にしてから、ブースデザインや出展内容の決定など具体的な準備に着手します。補助金・助成金の要件によっては、チラシの印刷費、スタッフの渡航費や宿泊費、展示物の送料なども対象となる場合があります。
ただし、計上できない費用の明細が混ざらないように経理上の注意が必要です。また、展示会中には、接客した来場者の数や具体的な商談件数など定量的な把握も行っておきます。
展示会の実施報告を行う
展示会で得られた成果について、具体的な数値や定性的な内容報告を行います。開催中の数字はもちろんですが、今後半年で期待される売上などの試算が求められることもあります。
自社の事業が公的なお金を投入するのにふさわしかったことを証明するために、このほか経費明細書を作成します。補助金や助成金の対象に含まれる費用の範囲を明確に記載して証憑書類を添付してください。
補助金・助成金を受け取る
報告書を提出し終えれば、補助金・助成金の交付に関する連絡を待ちます。交付決定の通知後、指定された日付に補助金・助成金が振り込まれることを確認しましょう。
社内の経理処理も忘れずに行うとともに、次回以降も補助金が活用できるか確認しておくと、翌年以降の出展計画も立てやすいでしょう。
展示会の補助金・助成金を使う際の注意点
補助金や助成金を使って展示会に出展する場合の注意点をまとめました。お金に関する認識不足は経営上のトラブルになりかねないので、よく確認しておきましょう。
出展手続きの前に補助金・助成金申請が必要なこともある
補助金・助成金の制度や実施団体の方針によっては、補助金・助成金申請が認められる前に出展手続きを済ませた場合は、交付の対象として認められない場合があります。
しかし、出展の確定後でなければ、申請を受付けられない制度もあるため、利用予定の補助金・助成金の申請条件をよく把握しておく必要があります。
補助金・助成金は事業報告の完了後に振り込まれる
通常、お金が交付されるのは展示会終了後、事業報告が受理されてからというケースが一般的です。
従って、出展にかかる費用はすべて一時的に自社が出費して、立て替える形式となります。事業規模の小さな会社については、この間に資金が不足しないように資金繰りを計算しておく必要があるでしょう。
補助・助成の金額(割合) に注意する
補助金や助成金で出展にかかった費用の全額が助成されることは少なく、一般的に「総事業費の2/3以内もしくは50万円以内」などと、上限の割合や金額が定められています。
たとえば、上の条件でかかった総事業費が100万円の場合、50万円が補助されます。割合としては1/2ですが、金額の上限が50万円までと定められているため、これ以上の交付は受けられません。また、総費用が60万円の場合には、2/3の40万円が対象となります。
補助金・助成金は併用できないことが多い
国や都道府県、市町村単位など、さまざまな組織が補助金・助成金を受付けていますが、異なる補助金を同じ事業、同じ目的に併用することは原則としてできません。
ただし、同じ企業でも全く事業の目的が異なるなどの理由があれば、それぞれの事業で別の補助金を申請することは可能です。
補助金・助成金以外で自社の負担を減らす方法
補助金や助成金は、直接的な費用負担を減らせるので有益です。しかし「補助金が得られる場合のみ出展する」という方針では、本来出展によって得られる機会を失ってしまう可能性もあります。
売上を拡大することが展示会出展の大きな目的のひとつなので、「補助金がもし認められたら幸運」という考え方をするほうがよいでしょう。
また、補助金・助成金に頼らなくても、自社の負担を減らす方法を紹介しますので参考にしてください。
自治体や商工会議所単位で出展する
展示会には、○○市、●●県、xx商工会議所といった単位で「パビリオン」を出展するケースがよく見られます。
地元自治体が注力している産業などが対象に選ばれることが多いようです。実施する自治体などにとっては、出展条件に合致する企業を後押ししたいという思惑があるので、比較的支援を得やすいでしょう。
ただし、自治体など実施する側が出展する展示会を指定する場合が一般的なので、参加企業が好きな展示会を選べるケースは少ないでしょう。
複数の企業と共同出展する
出展ブースを複数の企業でシェアする方法もあります。共同で出展する企業が増えると1社あたりの展示面積も小さくなりますが、複数社で費用を負担することで通常では予算オーバーとなるような大型のブースサイズでも出展できる可能性があります。
大きなサイズのブースは、目立ちやすいので各社の成果が高まることも期待されます。ただし、展示会の種類によっては、ブースのシェアが認められない場合もあるので、事前の確認が必要です。
即効性の高い出展を行う
先述したとおり、補助金の申請が認められてもお金を受け取れるのは展示会終了後のため、結局は自社で立て替える期間が発生します。それまでは費用の負担が減るわけではないので、展示会に出展してもすぐ売上が上がらないと悩んでいる企業は従来の展示方法を見直すのも一手です。
サンプル品の販売、製品の導入トライアル、1か月以内に申し込めば割引……など、製品やサービスの訴求方法を変えると、早期の売上につながる可能性もあります。従来の出展方法を即効性の高い方法に転換すると、資金繰りも好転するかもしれません。
まとめ
負担が少ない方がいいのはたしかでしょう。しかし、多少負担が大きくても費用をかけて大規模な展示会に挑戦した方が得られる対価も大きい可能性があります。
出展することが目的ではなく、会場で何を得られるかに着目して、出展計画を立てることをおすすめします。補助金ありきではなく、自社が本当に実現したいことから逆算して、プランニングしてください。
RX Japan 株式会社 第四事業本部 斎藤 広顕
2004年入社。花と宝石の展示会の国内営業担当として従事。2007年にガーデンEXPO(GARDEX)、2011年に農業WEEK、2017年に“日本の食品”輸出EXPOを発案し、立ち上げを担当。2022年にこれらの展示会の事務局長に着任し、発展に尽力中。また、DX Expertとして、社内横断の 「広告商品の強化プロジェクト」の責任者を兼任。
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