この記事でわかること
- 自社に最適な展示会を見極めるには
- 出展の目標を定めるノウハウ
- 会期後に成果を評価するノウハウ
展示会に出展して予算やマンパワーを投下するからには、期待以上の成果をあげたいと考えるのは当然です。何をもって出展が成功したととらえるかは目標設定次第ですが、自社に適切な目標を定めるには、独自のノウハウが必要です。
今回は目標の定め方と、会期後に成否を評価する方法を解説します。
自社に最適な展示会を見極める方法
同じ業種に向けても、年間を通してさまざまな展示会が開催されています。出展料金の高い、安いで展示会を選ぶのは本質的とはいえません。
次のようなステップで自社に最適な展示会を選んでいきましょう。
出展によって実現したいことを定める
まず最も大切なことは、出展した結果として得たい成果を定めることです。具体的に訴求したい製品が決まっている場合でも新規顧客開拓やブランディング、市場調査など目的によって、展示方法は異なります。
また自社がメーカーの場合にも、販売代理店を見つけたいのか、エンドユーザーとなる企業と出会いたいのかによって、最適な展示会は異なるかもしれません。
「販売店も欲しいし、ユーザーにも訴求したい」というときも、目的をひとつに絞るつもりで、最も達成したいことを明確にしましょう。
展示会の開催実績を調べる
出展による最優先の目的が決まったら、合致すると思われる展示会の候補をリストアップします。
展示会の規模や来場者数と業種の内訳、開催時期などを調べ、実績を把握することで、目的達成に近い展示会を選べます。同じ業界でもBtoCを主な対象とした展示会と、メインがBtoBの商談会を比較すると、大きくコンセプトが異なるので注意が必要です。
なお初めて開催される展示会でも、同時開催展や主催者の経歴などを調べましょう。初開催だからこそ、多くの来場者の注目が集まることも多くあります。
すでに出展している企業に実態を聞く
過去の出展実績や競合他社の出展状況も参考にするとよいでしょう。客観的な評価を聞きやすいのは前回開催された展示会の出展社です。
来場者数など公的なデータからは測れないさまざまな情報が聞けるはずです。できれば取り扱う製品のジャンルが異なる3~5社程度にヒアリングすると、情報が偏りにくくなるので安心です。
予算とリソースを見極める
どの展示会でも、出展するには相応の費用とマンパワーがかかるものです。直接的な出展料金のほか、ブース装飾費やチラシやノベルティの準備、スタッフの交通費や宿泊費など、トータルで必要な費用を把握しておく必要があります。
出展料金やブース装飾費は、出展スペースの大きさに比例して増加するものの、そのほかの関連費用はあまり連動しません。関連費用は控えめに抑えて、出展スペースやブースに投入する予算が多ければ、展示会場で目立ちやすくなるのでより高い出展効果が期待できるでしょう。
出展による目標を定める手順
出展効果を高めるには、出展による目標を具体的に定めることが大切です。また目標を立てたら、社内の誰もがそれを知っている状態を作り出すことで、目標達成に向けた機運が高まることでしょう。
出展のKGIとKPIを分ける
出展によって得られる成果は、会期後しばらく時間をかけてから表れるものもあります。そのため、最終的な目標(KGI=Key Goal Indicator)と、KGIを達成するための指標としてのKPI=Key Performance Indicatorを分けて考える必要があります。
一般的にKGIは売上金額を目標として設定することが多く、KPIはブースへの来場者数、名刺獲得数、アポイントメントの獲得数、営業へのトスアップ件数などが考えられます。
かつてはブースへの来訪者が多く、名刺の獲得枚数が目標を上回れば成功と定義していた企業もみられました。しかし来場者がどれほど多くても自社のターゲットに近い人が少なければ出展による効果は薄まります。
そのためKGIの達成に直結するKPIを逆算して設定する必要があります。
おすすめのKPIは会場での商談数
単純な来訪者数だけを追い求めるのは得策ではありません。確度の低い来場者の情報をいくら集めても最終目的である売上にはつながらない可能性が高いためです。
そこで注目したいのが、会場での商談数です。商談数は、一定以上の興味を持った来場者の数を表す指標になるので、売上との因果関係はより強いといえるでしょう。
どのレベルからを商談と呼ぶかの判断は、接客したスタッフの主観に委ねられます。5分以上会話したら、ブース内の商談スペースを利用したら、などと商談数にカウントする基準を決めておくのが有効です。
1日ごとの目標に落とし込む
会期中3日間の通算した目標だけを追いかけるのは、イメージが湧きづらいものです。日ごとの目標、さらに午前中で達成しておきたい件数を定めるとよいでしょう。
展示会によっては「最終日に来場者が最も増える」など、例年の傾向があるので、こうしたトレンドも加味して最終目標を達成できるように1日ごとの到達ラインを決めてください。
社内に広く目標を告知する
売上や商談件数など、定めた定量目標は展示会にかかわるあらゆるスタッフに周知してください。会期に臨むときには、誰もが今回の目標を即答できる状態が理想です。
1人ひとりに目標が浸透していれば、互いに意識しあい、達成できる確率が高まります。逆にいえば社員に知られていない目標は、達成できないと考えてもよいでしょう。
展示会の会期中に成果を高めるノウハウ
次に紹介するのは、展示会の会期本番で使える3つのノウハウです。3日間の成果を最大限に高めるために実践することをおすすめします。
接客のマニュアルを作っておく
接客マニュアルを作り、本番の1週間前にはロールプレイングを行います。アテンドするスタッフの中には、接客や営業に不慣れな方がいる場合も多いでしょう。
事前の準備なく本番に臨むと、接客の品質がバラバラになり、チャンスを逃してしまうかもしれません。
- ブース来訪者への声のかけ方
- ヒアリングする内容や順番
- 興味の度合いによって取るべきアクション
接客の一連の流れを整理し、名刺交換やアンケート回収、営業へのトスアップなどが効率的に行われるようにしておきます。
ひとりでも多くの来訪者に対して、積極的な接客ができるフローを作っておくことが重要です。
開催の事前の集客に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
接客後のラベリングを徹底する
声をかけたときの反応、アンケートの回答結果などの情報をもとに、顧客の反応が高い順にA・B・Cなどと、ランク分けを行います。
Aは、会期終了後に間髪を入れずにフォローすべき案件であり、できるだけ多くAのラベルが付いた案件を営業部隊に渡せるかが、会期後の成果を大きく左右します。
アンケートを回答しやすい内容としておくこと、会期後のお礼メールによって反応を得やすくすることなども、顧客のラベリングに有効な手段です。
結果の集計を毎日行い朝礼で改善を図る
どんなにブースが盛況でも、毎日必ず結果を振り返りましょう。よりよい成果を得るには、事前に作成した接客マニュアルを改善することが重要です。
たとえば訴求したい製品Aの名前を積極的に伝えていたとします。しかし製品Bの名前を最初に伝えた方が、来場者が足を止めてくれる確率が高いとわかるなど事前の想定と違うことは、展示会のライブな現場ではよく起こることです。
したがって会期中という限られた時間内に高速でPDCAサイクルをまわすことが改善の肝となります。数日のうちにどれだけ改善できたかで最終結果は大きく変わるでしょう。
会期後に成果を評価するノウハウ
最後に成果を評価するためのノウハウを紹介します。経営幹部は「費用をかけただけの価値があったか」「次回はブースを拡大するなど注力した方がよいか」などを、できるだけ早く知りたいはずです。
報告するための素材を集める方法を解説します。
ROI(費用対効果)を算出する
得られた成果(商談成約金額、新規顧客数など)を金額に換算してROI(投資収益率)を計算することで、展示会出展の費用対効果を算出します。
そのために、展示会にかかった総費用(出展料、ブース装飾費、人件費など)と、成約金額や新規顧客数を算出します。
会期が終わってまもなくは、商談が進行中で成否がはっきりしていない案件も多いはずです。ここまでの成約率や営業の現時点での手応えなどを根拠に、最終見込みを算出するとよいでしょう。
KPIの達成状況から確認する
出展前に決めたKPIが達成できているかも確認します。展示会での手応えはよかったものの、成約にはつながっていないケースもあれば、逆に展示会で生まれた商談は少なかったのに成果は得られているという場合も起こり得ます。
一般的に企業が営業活動を行うのは展示会だけではありません。そのため「出展したことで得られた売上金額」を正確に算出するのは難しいものです。だからこそ、売上だけでなく事前に設定したKPIの達成状況を確認することも展示会の評価には欠かせません。
ブランド認知度の変化
展示会前後でWebサイトへのアクセス数や問い合わせ数、SNSでの言及数やフォロワー数の増加なども確認しましょう。
すべての原因が出展によるものとはいえませんが、通常の様子と比べて変化があれば展示会の影響はあるといえます。
ブランド認知度を数値化するのは困難ですが、メディアへの露出内容や業界内での評判の変化を定性的に把握することも重要です。
社内フィードバックの収集
出展にたずさわったスタッフ、ブースにアテンドした人から展示会の感想や気づきをヒアリングします。評価できる点や次回の出展に活かしたい改善点は、記憶の新しいうちに収集しておきましょう。
営業、マーケティング、製品開発など複数部門の所感を集めることが社内の客観的な評価にもつながります。
数字には表れない出展の成果
数字には直接表れなくても、展示会出展によって次のような副次効果が得られることも知っておくとよいでしょう。
営業の基本スキルの向上
アテンドした社員の営業や接客のスキルは短期間で急速に鍛えられます。日常では、1日で数十人、数百人の見込み顧客と接する機会はなかなかありません。集中して、会話を繰り返すうちに場慣れするだけでなく、来場者が欲している情報に先回りできるようになるなど見違えるように営業力が向上するはずです。
製品の改良や開発に対するフィードバック
出展のメリットのひとつに、自社の出展製品に対する客観的な評価が聞ける点があげられます。普段ユーザーと接する機会のない部署の社員にとっては忖度のないフィードバックをうける絶好の機会となります。
また顧客から聞いた製品への意見や要望なども、接客した個人でストックしてもあまり意味はありません。寄せられた声は、厳しい内容も含めて社内でフィードバックすることが、今後の改善につながるはずです。
組織としての一体感が醸成される
出展した経験が少ない組織ほど、展示会への出展は一大イベントだと感じられるでしょう。普段は別々のセクションで仕事をしていても、本番に向けて業務を進めることで、部署の垣根を越えた一体感が生まれたという声もよくお聞きします。
社員同士の団結力が強まることで、展示会以外のイベントやキャンペーンなどでもよい影響が表れるでしょう。
まとめ
展示会の準備、開催中、会期後と時系列を分けて、さまざまなノウハウを紹介しました。いずれも成果をあげている企業に共通するノウハウなので、ほかの企業が取り入れた場合にも好結果が見込めるものです。
出展回数を重ねることで自社にも独自のノウハウが蓄積されていきます。組み合わせて使うことで、展示会によって得られる成果をさらに高められるでしょう。
RX Japan 株式会社 第二事業本部 小山 彩
2013年に中途入社。Exhibitor Successエキスパートとして国内外出展企業サポートに尽力。担当展は化粧品、観光、高機能素材に関する展示会などさまざま。2024年よりシニアエキスパートとして、すべての展示会で出展社により成果をあげていただくために日々ノウハウや事例をお伝えしている。
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